今回は、「秋の特集2」と題し、前回の「神楽」について、地域色豊かな3つの伝統芸能もあわせて、さらに詳しくご紹介します。
「道の駅」では、「地域連携の拠点」「情報発信の拠点」という基本方針(ちょっと堅いですね)のもとに、その地域ならではの伝統や文化を伝えてくれる施設も充実しています。資料館や体験施設・イベント開催など、“単なる直売所”ではない、道の駅の新たな面白さを見つけることも、道の駅ユーザーの賢い楽しみ方のひとつです。
「文化の秋」を彩る九州の伝統芸能は、地域の素敵な横顔を見せてくれています。

清川神楽会館


大分県南部、豊後大野市清川町。「道の駅きよかわ」に隣接する「神楽会館」は、2009年6月に開館した複合型の施設です。豊後大野市で行われている神楽をはじめ、さまざまな伝統文化の継承や発展、担い手の育成を行っています。座席数は、288席。演者と観客との距離が縮まるような臨場感があって迫力は十分です。
また、上演されない日も、エントランスホールでは、関連文献や道具・パネルの展示など、郷土のさまざまな伝統芸能が紹介されています。会議室や調理室などの機能もあり、各団体の活動発表や練習の場、生涯学習の場なども備わっていて、公民館的な側面があることも地域に密着した施設であることをうかがわせます。


御神楽(みかぐら)と、里神楽(さとかぐら)


 現在、日本で継承され「神楽」と呼ばれているものは、宮中で行われている御神楽(みかぐら)と、民間で行われる里神楽(さとかぐら)の2種類に大別することができます。
とくに里神楽は、日本全国津々浦々にある神社で催されていて、その形は誰が見ても分かるくらいに多種多様な違いがあります。歴史とともに伝承を重ねる中で、その系統は分類され、巫女神楽・出雲流神楽・伊勢流神楽・獅子神楽などと分かれているそうです。
 また、古事記や日本書紀などの古い文献では、天の岩戸開きの際、天売受女命(あめのうずめのみこと)が神懸かりして踊ったのが始まりだとされ、舞踊という動きの中で神と人が一体となる意味がこめられています。
 ここまでお話しをすすめていくと、なんだか古式ゆかしい「家元」のような人がいて、その公演を観覧するんだろうと思いがちですが、里神楽においては、これを地元の青年たちが舞うのも忘れてはならない大事なことです。道の駅きよかわのスタッフの方も、お仕事が終わってから練習に汗しているというから驚きです。

大野系岩戸神楽の発祥地
そして、大分県内では、出雲流の影響を受けた「岩戸神楽」と称されるものが多く、神話を題材として着面(つまりお面をつけて)して舞います。そこからさらに、「豊前系」「国東系」「大野系」「日向系」に大別されますが、豊後大野市は、「大野系岩戸神楽」の発祥地と言われています。
 「大野系岩戸神楽」の特色は、他の神楽に比べ所作が大きく躍動的なことです。跳びはねたり踏み込んだりと、荒々しい印象を強く残す神楽で、華麗な衣装ともあいまって見るものを魅了してきました。そして、明治以降に広い地域へと伝播し、現在では阿蘇〜竹田〜直入〜大分〜佐伯などの広い地域で、その舞いが受け継がれています。

 近隣の道の駅としては、神楽館も併設する「道の駅 波野」や定期的な公演を行う「道の駅 豊前おこしかけ」などが知られますが、厳密に言うと、その踊り方や楽しみ方も、各々でスタイルが異なっているようです。どうやら、このお話をより深めていくためには、「調べもの」が多くなってしまいそうですね。あしからず。
継承される民俗芸能
この地域では、「神楽」以外にも古式ゆかしく地域色豊かな民俗芸能が多く残っています。人数を要すために存続していくことが難しいこともあり、過疎化の波に押されながらも、今でも地元の方々の手により、熱心に守り伝えられているようです。ここでは、簡単にではありますが3つの伝統芸能についてご紹介します。
白熊(はぐま)
 大名行列の毛槍捻りを模したことからはじまったとされる「白熊(はぐま)」は、歌い手と練り手により演じられ、神輿の先導役を務める御幸祭では欠かせない芸能です。
 歌い手は、3人から4人で構成され、羽織、袴に陣笠をかぶり拍子木をもち「御歌」を歌いながら粛々と進んでいきます。「お立ち」「道中」「門くぐり」「お帰り」など、決められた歌があって、練り子はそれぞれに決まった所作をつけていきます。練り子の出で立ちは鉢巻、法被、股引き、腰には角帯を結わえ手甲脚絆(てこうきゃはん)を着けわらじを履きます。この白熊にも、さまざまな流派がありますが、その実態には不明な点も多く、実際にそれぞれの白熊が何流であるのかが伝わっていないことが多いようです。

獅子舞
 獅子舞は、古くは奈良時代、西域から伝わった伎楽(ぎがく)から始まったとされる芸能で、全国に広まっている神事芸能の1つです。全国で見られる獅子には、唐獅子や竜などの想像上の動物や、ライオン、虎、鹿や猪を模しているものが見られ、霊獣としてその力を崇め、信じることで、場を鎮め、魔を払う意味から演じられることになりました。市内には60を超える獅子舞が伝承され、神楽と並び、大野川中上流域を発祥とする芸能の1つとなっているようです。
 この地域の獅子舞の大きな特色は、2~3人で1つの獅子を演じる事です。その所作には、大きく激しい動きが取り入れられ荒々しい印象が強いものとなっています。神の行き道をなめるように払い清め、悪霊を追い払う役目があって、神社での御幸行列(神輿行列)では、必ず神輿の先導役として一番に立ちます。獅子舞が動かないと神輿も動けないと言うほど重要な役目を負っています。
棒術
棒術は、杖楽(つえらく)と言われ、もともと古武術から発展、芸能化したもので大分県内でも西部、南部に分布しています。天狗や鬼の面を着けた指揮者の元で太鼓などの囃子と共に演技する県西部の「杖楽」と武術の芸態をより強く残した県南地域の「棒術」とに大別されますが、南部に位置する豊後大野市内で見られる棒術では、竹内流、鞍馬流など諸流派が伝承されており、江戸時代末期から明治維新の動乱期にかけて、農民たちが護身のために修練したものといわれています。羽織・袴を身につけた者が2m程の棒を取って向き合い、かけ声をかけて、時にアクロバティックに棒を打ち合います。その姿は、まさに「武術の稽古」で、芸能とはいえ実戦的なものであることがわかります

豊後大野市神楽会館
〒879-6903 豊後大野市清川町砂田810番地 (Google MAPで地図を表示)
TEL 0974-35-2372
HP:http://www.bungo-ohno.jp/kagura/index.html



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 地域に伝わる伝統芸能。その習わしやルーツをたどっていくと、生き抜いてきた人々の思いやご苦労が垣間みれるようです。湧き出てくる深さや面白さが、この誌面だけでは決して書ききれないものだということも、どうぞご理解下さい。
 道の駅には、「地域をうつす窓」という側面があります。来訪し、その地の空気を味わいながら、探訪・見聞を深めてみるのも、「道の駅」の楽しみ方の一つではないでしょうか。



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